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KHP30様ファージのピロリ菌認識機構の解明とピロリ菌の迅速検査・除菌への応用

所属
高知学園大学 健康科学部 臨床検査学科
専門領域
微生物学(細菌学、ウイルス学)
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松﨑 茂展
松﨑 茂展 教授

研究の目的

  • ピロリ菌ファージの生活環の解明
  • ピロリ菌ファージのピロリ菌進化への影響の検討
  • ピロリ菌ファージを利用する応用的研究

どのようなことから研究を着想しましたか

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、ヒトの胃内に生息し、胃炎、胃潰瘍、胃癌などの原因となる細菌です。一方、バクテリオファージ(ファージ)とは、細菌に感染するウイルスであり、環境や生体における細菌数の調節や、細菌の病原性発現等に関与しています。しかしピロリ菌とファージの関係は未知であるため、その解明を目標に本研究を開始しました。

この研究にはどのような面白さがありますか

ピロリ菌に感染する活性ファージは、現在世界で4種しか知られていません。私たちは、そのうち2種のファージ(KHP30、KHP40)を見出し報告しました。このようにピロリ菌ファージはきわめて稀少であり、かつその生活環も独特で大変興味深いファージです。

この研究でどのような成果が得られましたか

上記ファージは、ピロリ菌にゆっくりと吸着し、その後2時間以上をかけてごく少数の子供のファージを作ることが分かりました。作られた子ファージは、低いpHでも生存可能であり、胃の酸性環境に適応していると予想されました。またピロリ菌とファージのゲノム解析により、両者の間に想定外の協調的関係が予想されました。

社会にはどのような貢献が期待できそうですか

ピロリ菌ファージのライフサイクルの一端が明らかになったことで、将来のファージを利用するピロリ菌感染症の治療法や検査法の開発へつながる可能性があります。また、ファージのピロリ菌進化へ関与、病原性発現への関与が明らかになることが期待されます。

大学の授業にもこの研究が関係していますか

微生物学の授業では、ピロリ菌はグラム陰性らせん菌の項目で登場します。それで、授業においてはピロリ菌に関する基礎的項目に加え、本研究で得られたピロリ菌とそのファージに関する情報等も織り交ぜて、話したいと考えています。

研究課題

科研費 基盤研究(C) 22K08593
  • 研究代表者:松﨑茂展
  • 2022年4月~2025年3月

この研究が関連する主要業績

  • Host-encoded DNA methyltransferases modify the epigenome and host tropism of invading phages. Michiko Takahashi, Satoshi Hiraoka, Yuki Matsumoto, Rikako Shibagaki, Takako Ujihara, Hiromichi Maeda, Satoru Seo, Keizo Nagasaki, Hiroaki Takeuchi, Shigenobu Matsuzaki. iScience, 28, 112264. 2025.4.
  • Analysis of the life cycle of Helicobacter pylori bacteriophage KHP40 belonging to the genus Schmidvirus. Masahiro Iwamoto, Michiko Takahashi, Hiromichi Maeda, Hiroaki Takeuchi, Jumpei Uchiyama, Takako Ujihara, Keizo Nagasaki, Kazuhiro Hanazaki, Satoru Seo, Naoya Kitamura, Tetsuya Yamamoto, Shigenobu Matsuzaki. FEMS Microbiology Letters, 371, fnae082. 2024.10.

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公開日: 2025年5月 1日

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