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細胞老化に伴う情報エントロピー分布変化の トランスオミクス解析

所属
高知学園大学 健康科学部 管理栄養学科
専門領域
生物物理学、解剖生理学
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菊島 健児
菊島 健児 教授

研究の目的

  •  様々な最新の測定技術の開発によって生体情報のビッグデータが容易に得られるようになってきました。それらから計算される「情報エントロピー」の生物学的意義を「老化」の観点から明らかにしたいと試みています。

どのようなことから研究を着想しましたか

【時間の概念とエントロピー】

「時間」って不思議な存在だと思いませんか?時間は絶えず未来に向かって一定のスピードで経過するのに、決して戻ることはありません(時間の矢)。私は物理学科の出身で「時間」の概念に興味を持ってきました。今ではそれが高じて「寿命」や「老化」をテーマに研究しています。

統計力学において、エントロピーとは分子運動の乱雑さを表します。自然界ではエントロピーは増加する方向に進みますが、自然と減少する向きには反応は進みません(熱力学第二法則)。「時間の矢」は、このエントロピーの増加と関係していると考えられていますが、未だにハッキリした証拠は得られていません。熱力学第二法則は全てのものに当てはまります。生きているということは、エントロピーの増加に逆らって、食べ物のエネルギーを得て、必死で自らの身体の構造を維持しようとする活動であると考えることができます。

【情報エントロピー】

エントロピーは分子運動だけでなく、情報の乱雑さを表す指標として用いることもできます(情報エントロピー)。理論物理学では、情報自体にエネルギーがあり、これらのエントロピーは、実は等価なのではないかという理論が提唱されていますが、詳しいことはまだ解明されていません。

【ビッグデータ解析】

近年、様々な測定技術の開発によって生体情報のビッグデータを容易に得られるようになっています。これらのビッグデータからも情報エントロピーが計算されますが、これまでに私は質量顕微鏡観測で得られる腎臓のエントロピー分布が、老化とともに変化することを明らかにしました。また、遺伝子発現の情報エントロピーも老化によって変わることが報告されています。私はこれらの異なる解析によって得られる情報エントロピー変化から、老化の本質に迫りたいと考えています。

この研究にはどのような面白さがありますか

本研究は老化のメカニズム解明を目標にしていますが、行く行くは、単に生命現象を明らかにするだけでなく、「時間とは何か?」という最新の物理学のトピックスを見据えて展開していければと、密かに夢見ています。

大学の授業にもこの研究が関係していますか

これからはテーラーメイド医療が発展し、個人個人の遺伝子や細胞成分解析結果を活かした治療が一般的になってきます。そのような将来において、ビッグデータの扱いと応用に関する理解は必要不可欠です。本学では医学・生命科学の基礎をしっかり身に着けると共に、最新の研究手法に関しても常に興味を持ってもらえるように心掛けて指導に当たっています。

研究課題

科研費 基盤研究(C) 25K09589
  • 研究代表者:菊島健児
  • 2025年4月~2028年3月

この研究が関連する主要業績

  • Spatial distribution of the Shannon entropy for mass spectrometry imaging. Lili Xu, Kenji Kikushima, et al. PloS one, 18(4), e0283966, 2023年4月6日
  • Associations between prefrontal PI (16:0/20:4) lipid, TNC mRNA, and APOA1 protein in schizophrenia: A trans-omics analysis in post-mortem brain, Fumito Sano, Kenji Kikushima, et al. Frontiers in Psychiatry, 14, 1145437, 2023年4月18日

🖨 印刷用(PDF)

公開日: 2025年11月 1日

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