なるほど論文#1 納豆の力

本学、菊島 健児教授のFood & Nutrition Journalに掲載された、4週間の納豆パウダー摂取が健常な成人の整腸作用に与える影響についての科学的検証の論文についてご紹介します。

はじめに

納豆は日本の食文化として古くからの歴史があり、様々な健康に良いと考えられてきました。それには、納豆菌が腸に届くことで腸内環境を整えることが重要であると考えられていますが、納豆が便秘に効くかどうかに関しては、これまで、ほとんど研究が行われていませんでした。

信頼性の高い試験デザイン

この研究は、科学的根拠の信頼性が最も高いとされる「ランダム化比較試験(RCT)」という方法で行われました。被験者には納豆パウダー(試験品)か性状の区別のつかない偽薬(プラセボ)のどちらかが渡されますが、被験者自身も、試験監督者もどちらを渡されたのかを知ることはできません。4週間摂取し、試験後に初めてどちらを渡されたのかが明示され、それぞれの効果について検証が行われます。これにより、偶然や思い込みによる影響を最小限に抑え、納豆パウダーの効果を正確に評価しています。

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参加者

便秘傾向のある健常な成人30名

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納豆群 (15名)

納豆パウダー3gを毎日摂取*1

VS

偽薬群 (15名)

納豆の原料と同様の大豆パウダー3 gを毎日摂取*2

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4週間後の評価

排便状況だけでなく、睡眠や疲労感といった健康状態の変化を比較しました

*1 株式会社ヤマダフーズ様にご提供いただきました。原料は秋田県産リュウホウ大豆と世界自然遺産である白神山地から分離された納豆菌を使用しています。
*2 プラセボ(偽薬)として、同じ原料の大豆を使い、納豆と同様に炊いたものを、納豆菌を使わず同じように乾燥させ、パウダー状にしたものを用いています。

主要な結果:排便時の痛みの明確な改善

排便時の痛みの改善

4週間後、納豆群、プラセボ群ともにほぼ全ての項目で便通の改善が見られました。なかでも、排便時の痛みの変化は納豆パウダーを摂取した試験群の方がプラセボ群よりも大きく、便の色と臭いも納豆パウダー摂取に伴う変化が確認されました。

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疲労感、睡眠の質の改善

「脳腸相関」と言って、脳機能と腸の健康は密接な関係にあることが知られています。本研究では、納豆群、プラセボ群ともに日常生活における疲労感の改善が示されました。また、睡眠の質の向上が確認され、これらの変化は納豆パウダーを摂取したグループにおいてより強く現れました。

結論

便秘傾向のある健常な成人を対象に4週間の納豆パウダー摂取は、「生え便時の痛み」に代表される諸症状の改善に効果的であることが示されました。さらに、納豆パウダー摂取は疲労感を軽減し、睡眠の質を改善する効果も確認されました。同様の改善は、原料である大豆パウダー摂取によっても見受けられますが、納豆パウダーの効果がより大きいことが判明しました。このことから、原料である大豆自体にも便秘改善等の効果はあるものの、納豆菌が腸に無い環境を整えることで、より大きな効果が得られることが考えられます。

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